何をもっていい演奏とするのか。そもそも良い演奏って何なのか・・🎹
何だかとっても大きなテーマをタイトルにしてしまいましたが、私がここで書きたいのはもう少し簡単なお話。
数日前にブログで、
“技術の発達により現代の演奏録音というのは基本的に(ピアノの場合)どれも「カット」が含まれていて、完成品はいくつかの録音を掛け合わせて作り上げられたもの(=一発撮りではない)”
・・・という話を少し書いたのですが、それの続きです。
今となっては録音にカットが入るのは当然の事で、寧ろ入らないことがない時代ですが、昔は違いました。
なぜ、昔の録音にカットが無いのかというと
例えば環境音などが入ってしまうと、カットして他のテイク演奏を切り貼り「ブチッ」と分かりやすく途切れてしまい、カットの境目がバレてしまいます。
昔は技術的な問題で演奏の切り貼りが出来なかったんですね。
昔は無かった「カット」の概念が今は多用されているわけなのですが・・・
その違いがもたらす大きな変化がいくつかあります。
1.自由が利きにくくなった
2.”ミス=良くない” という思考が広がった
まず一つ目の自由についてですが、これはとっても簡単なお話で、
カットが可能になった現在の録音というのは、後で修正がしやすいようにどのテイクも大体同じようなテンポで弾きます。
毎回全く違うテンポで弾いたり、或いはテイクによって揺らし方を大幅に変えたりしてしまうと、後でテープの切り貼りをする時にカットを上手に繋げられなくなってしまうんですね。
勿論、毎回全く同じ演奏をするわけではありませんが(そもそもそんな事は不可能ですね💦)、それでも後のカット作業がやりやすいようにある程度自由度を制限していたりします。
これに関しては、オーケストラと共演する時にも少し同じようなことがいえますね。
オーケストラと共演をする場合、100%自分のやりたいことを出し切ることはなかなか難しく、基本的にはオケとタイミングが合うようにあまり揺らしすぎず、ある程度テンポを守って演奏します。とにかく「オケと合わせる」を最重要視します。
世界で活躍する大ピアニストであれば、かなり細かい要望まで指揮者と一緒に念入りに準備してオケとの合わせも何回もできると思いますが・・・、残念ながらそれほどの希望が通るのはごく限られた一部の方のみ。普通は、指揮者・オーケストラの方々がただ一人のピアニストに構っていられる時間はそれほどありません。💦
オーケストラとの合わせは3回も出来たらいい方。
ひとりで練習している時にはいくらでも酔いしれて自分の世界を作り上げてしまって大丈夫ですが、オーケストラとの合わせの時にはオケとズレる事が無いように心がけながら、その中で自分の演奏を出し切ります。
2つ目のミス=良くないというのも単純なお話です。
カットが出来るようになって何が1番大きいかというと、”間違えた箇所・うまくいかなかった場所を後から修正できるようになった”という事です。
それにより、間違えたところは直すという考えが広まり、自然と「間違い=直すべきもの」という絶対的な式のようなものが出来上がっていきました。
昔も、「ミスタッチはしない方がいい」という考えはあったはずですし、誰もができるだけミスを避けられるように練習していたと思いますが、それと同時にミスがある録音というのも多く世に出ていました。
今でもYouTubeなどで聴くことができますが、戦前・戦後あたりまでのピアニストの演奏は人によってミスがたくさんあるものも存在します。
(有名なところだと例えばアルフレッド・コルトーのショパンエチュードなど。)
ミスがありながらもそんな事が全く気にならないほど素晴らしい音楽があるのだったら、それはミスが無い”完璧”な演奏よりもよっぽど心に訴えかけるものがあるんじゃないかと思います。
まあ、これはとっても大きなテーマで簡単にこうだといえる話ではありませんが、今回は録音技術の変化がピアノ演奏の歴史にどんな影響を与えたのか、ざっくりと書いてみました。
ちなみに、ピアノの録音は結構時間がかかります。
スタジオを借りられる時間にも左右されますが、場合によっては数日かけて撮ることも。なかなかの重労働です。
ということで、少し長くなってしまいましたが、これを読んでへぇ~!と思っていただけたら嬉しいです。
お読みくださりありがとうございました♪